宮下誠氏お別れの会

7/2市ヶ谷の私学会館アルカディア市ヶ谷で、國學院大學文学部教授であった畏友宮下誠君のお別れの会があり、出席してきました。

新進気鋭の西洋美術学の語り部として、一部で絶大の支持があり、また音楽にも造詣が深く、最近では光文社新書から
20世紀音楽 クラシックの運命
カラヤンがクラシックを殺した
といった本を出していて、独特の語り口が賛否両論だったりしました。

私より1歳年上の宮下君は5/23に学会で京都へ出張中、心不全により急逝。享年47歳。
あまりにも突然な若すぎる死でした。

彼がまだオーヴァードクターだった頃、以前の勤務先でいっしょになり、音楽好きという共通点から非常に親しくなり、コンサートへ行ったり、CDの大人買いとかよくいっしょにしてました。

国語を教えていたけど、ホントろくなこと教えていなかったなぁ。
好き勝手なことばっかり言って、それでもクレームもないし、塾の良い時代だったのかもしれない。

バーゼルへ留学するときは、留学資金のために彼のCDコレクションを買ってやったり、行商人のように友人たちに売ったりしたものでした。

バロック好きの私に対して、彼はバロックも好きだけど20世紀の現代音楽も好んで聴いていて、オペラが苦手でワーグナーやイタリアオペラだってほとんど聴かない私にヒンデミットの「世界の調和」やらプフィッツナーの「パレストリーナ」とか聴かされたものです。

池袋のHMVにはよくいっしょに行っては、「これを買いたまえ」と妙なものを次々と勧められては私もつい買ってしまったりして。
オランダの廉価盤レーベルのブリリアントを教えてくれたのも彼だし、A.フィッシャーのハイドン交響曲全集もムリヤリ買わされたんだったなぁ。大正解で今は私がみんなに勧めてるけど(^_^;)

ここ数年は忙しくメールと年賀状しかやりとりがなく、借りっぱなしだったエッシェンバッハのマーラー「復活」の海賊盤も返せないまま。

「君にはワグネリアンの素質がある」とオペラ苦手な私をワグネリアンにすると宣言しておきながら、実行せず先に逝ってしまった。

生前、死んだら葬儀はするなといっていたため、代わりに教え子・友人たちが発起人となって昨日の「お別れの会」が開催された次第。
本来は「お別れの会」すらみんなに迷惑かけるからやらないと言っていたそうだけど。

会場に飾られた彼の遺影はいつもと同じように満面の笑みのまま、グラスを持って乾杯のポーズのもの。

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会はまず最初に読響のコントラバス奏者の西澤誠治さんによる独奏から。

J.F.ツビンデン「J.S.バッハへのオマージュ」(1969)
全く知らない作曲家の知らない曲。

おそらく会場の人もほとんど知らなかっただろうけど、20世紀音楽の紹介本を何冊も書いた彼にはぴったりだったのかも。
その後、彼の恩師、同級生、教え子代表の挨拶があり、こういうのってたいてい表面的な挨拶ばかりでつまらないんだけど、全ての人が彼の死をホントに悲しみ、惜しんでいるのがよくわかる話ばかりで、私は美術は全くわからない門外漢だったけど、特に教え子代表の女の子の決意表明ともいうべき力強い言葉に心を打たれました。

献杯と黙祷の後は岡田龍之介さんのチェンバロによるL.クープラン「パヴァーヌ」嬰ヘ短調。
そういえば15年以上前、宮下君に連れられて初めて岡田さんのチェンバロを聴いたんだなぁ。

最後に未亡人となってしまった香さんのあいさつ。
2人が結婚する前に3人で水戸までモンテヴェルディの「ヴェスプロ」を聴きに行ったりしたなぁ。
香さんが「この人と結婚して大丈夫ですか?」というので「いやぁ止めておいた方がいいと思うよ(^◇^)」と答えたら「やっぱり?(^_^)」なんて言ってたのに。

会終了後、香さんと少し話しました。「体調悪かったの?」と。
とにかく仕事しすぎで、最近はめまいをして階段から落ちたり、吐血までして検査を受けたりはしていたらしい。それでも仕事のペースを落とさなかった。
なんでそんなに生き急ぐんだよ?

奥さんと小6の一人息子を残して、仕事も家庭も心残りだろうけれど、でも好き放題やってきたんだから十分幸せな人生だったと思う。

彼の残した音楽関係の著作をもう一度読んで、苦手な20世紀音楽も聴いてみよう。
私の友人の中でも最も特異な人間だった宮下誠。
またいつかそっちにいったら朝比奈のブルックナーでもいっしょに聴いて「神様降りてきたねぇ(^_^)v」と語り合おう。じゃあまた。

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迷走する音楽―20世紀芸術学講義〈2〉 (20世紀芸術学講義 (2))

許光俊の言いたい放題 
「これは・・・思わず絶句の奇書~宮下誠『迷走する音楽』」

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by ryoseim | 2009-07-03 14:19 | 雑談